アトリエ通信

色の秩序、形の秩序

 毎回、子どもたちの活動からは、私たち講師も新しい発見や驚きや感動をたくさんさせてもらっていますが、先週の活動の中でも一番驚いたのは「モザイクの活動」でした。こんなに集中するものなの??と改めて、和久先生の作られた「ケルンモザイク」という童具の奥深さと、それを使う子どもたちの創造力の豊かさに感動させられました。

 特に、小学生の子どもたちののめり込みようは、本当に凄くて、まず最初の10分くらいは、「先生がやれっていうからやるよ」くらいの様子で始めます。作るパターンも「連続模様」や「対称形」がほとんどです。ところが、パターンボードに2枚くらい作り、3枚目くらいになってくると、どの子も急に目つきが変わってきました。真剣な顔になって、一言も言葉を発しなくなります。パイディアからルドゥスに移行したまさにその瞬間でした。(遊びの創造共育法①p36~ )そして、熟考して作り上げられる作品は明らかに変わってきます。対称形のパターンからだんだんと非対称形になってきたり、「この作品は、何を表現したかったのかな?」と思わず考えさせられる、何ともいえない魅力的な作品を作り始めるのです。

 

「集中したら集中しただけ、凄い作品ができてくるからね〜」 和久先生が、口癖のようにおっしゃっている言葉ですが、まさにその通りでした。モザイクを始めてから20分が過ぎる頃には、もう子どもたちの手は止まらなくなっていました。30分が過ぎる頃、「もうそろそろ、次の活動に行こうか?」と声をかけると、全員が「待って、もう1枚」「まだだめー」「今日はこれだけ(モザイクだけ)でいいよー」という返答が帰ってくる状態でした。アトリエにあるモザイクを使い切るまで続いたクラスもありました。「やめられない」けど、モザイクがなくなったから仕方なくやめるかー、といった感じです(笑)。

 今回のモザイク遊びでは、親子から小学生のクラスまでどのクラスでも「3原色、3補色(赤・黄・青・橙・緑・紫)」の中から「好きな2色を選んでパターンボードに入れていこうね」と声をかけました。使う色を限定することで、選んだ2色の関係性を視覚的に感じることができ、また、モザイクが持つ形の秩序(数学的法則)を感じ、形の変化の面白さを感じながら活動できたのだと思います。

 幼児クラスでも、今までモザイクといえば、パターンボードの上にがさっと、こんもりと、お山にして乗せていた子がひたすら集中し、素晴らしい作品を4枚も完成させてくれました。最後の1枚は本当にじっくりと考えて、「ここはこの色か?いやこっちか?」と入れ替えをしながら熟考を重ねている様子には驚きました。出来上がった作品も「凄い!」の一言です。

 童具は、使い込むほどに、子どもたちの表現が豊かになってくることを実感した先週でした。

父の人生

 暦の上では立春を迎えましたが、まだまだ寒さは厳しいですね。でも、昨日、私は梅の花の小さな蕾を見つけましたよ。季節は確実に春に向かっていますね。2月、3月は4月からの入園や入学、進級への不安を感じて子どもたちの心もざわつく時期です。いつもよりわがままになったり聞き分けが悪くなったりしても、母はドンと構えて不安を包んであげてくださいね。春に備えて、心の中にかわいらしい蕾を育てている時期です。自信を持って花を咲かせる時は必ずやってきますよ。

 先週は私にとって色々なことがあり、アトリエを再開する今日の日まで本当に長く感じられました。実は10年間闘病を続けていた父が他界しました。私は父が逝く数時間前に父の元に行くことができ、最後のときを一緒に迎えてあげることができました。

 父は本当に人生を楽しむ人でした。多才な人で、バイオリンがすごく上手で、油絵も描きます。テニスにウィンドサーフィン、大きなバイクにも乗るし、釣りにキャンプにお遍路の旅などなど。ある時期、自宅で『数学塾』を開き大繁盛していたこともあります。色々な人を巻き込んで楽しんでいました。娘の私の目から見ても、いい人生だったねといってあげられるくらいです。しかしながら、そんな父も幼少時期は自由に遊ぶことなく、母親からバイオリンの英才教育を受けていたそうです。小学校、中学校の頃には、学校から帰ると一時も遊ぶことなく、母親と一緒にバイオリンの練習をやっていたそうです。父の2歳下の弟は「兄貴はいつもバイオリンをやらされていたから、一緒に遊んだ記憶がない」と言っています。そんな父が、どうしてどうなって、あんなに人生を楽しめる人に変わっていったのかは私には分かりませんが、きっと「好きなことしたい」という思いがある時あふれ出したのだと思います。父は、子どもの兄と私にも、3歳頃までバイオリンの英才教育を試みましたが、やはり自分の経験を思い出したのでしょうか、私たちが小学生になる頃には完全にあきらめ、好きなことをして成長することを許してくれました。特に末っ子の私には、何も強いることなく、何をしていても、どんな性格でも、まるごと認めて愛してくれていました。褒めてもらったこともありませんが、行動を否定されたこともありません(悪いことをした時は、もちろん、怒られましたが・・)。何かを強いられたこともありません。私のやることをまるごと受け入れてくれていただけです。父の無償の愛が、今の私を支えてくれているのだということを、父を亡くした今、本当に実感しています。

 「やりたいことをやって生きていきたい」という気持ちは私の中にも強くあります。父から受け継いだ遺伝子かもしれませんね。そして、子どもを産み、育てていく中で、子どもたちのやりたい気持ちが大人によって抑えつけられている現実をたくさん見てきました。父はある時母親に反抗し、やりたいことをやっていくことに決めたから良かったのですが、やりたい気持ちを抑え続けている人もたくさんいることでしょう。「やりたいことをやり遂げた喜び」は子どもたちの心の中にたくさんためていって欲しい喜びです。そして、その喜びを蓄積した子は、自分から目の前の現実を変えていこうとする力が自然と備わってきていることを、アトリエの子どもたちから学びました。人間がやりたいことをやって生きていくことは、自分自身のためだけではなく、社会をより良く変えていくことにもつながっていくことを、私は実感しています。だから、私は「わくわく創造アトリエ」を始め、今も続けているのだと思います。和久共育が、アトリエの中だけに留まらず、幼稚園、小学校などの教育機関で普通に取り入れられ、全ての子どもたちが和久共育に触れて成長していける環境が整う日を、心から願っています。

目の前の楽しいことに向かう時

 子どもたちの成長の著しさには本当に毎回驚かされます。毎日接していらっしゃる保護者の方々は、気が付きにくいかもしれませんが、週に一度しか会えない私たちにとっては、毎回、毎回、子どもたちの成長を感じることができます。まして先週は3週間ぶりに会う子どもたちでしたので、子どもたちの変化には目を見張るものがありました。1か所に留まっている子どもは一人もいません。常に、環境を吸収しつつ、自分を成長させている子どもたち、すごいことです。わくわく創造アトリエの子どもたちは、どの子も本当に素直に、真っ直ぐに、その子らしく育っていますね。ご両親が「こうあるべき」という大人としての価値観を押し付けないで、子育てをされていることが証明されているようです。子育てにたくさんの不安や悩みがあるのは、みんな同じようです。悩みながら私たちも親として育っていっているのでしょう。子どもと共に育つ気持ちを忘れないで、これからも一緒に子どもたちを見守っていきたいと思います。

 さて、今週の活動は、先週に引き続き「三角」がテーマですが、よりシンプルな三角である「正三角形」から、ちょっと複雑な三角の「直角2等辺三角形」に移ります。同じ「三角形」でも、ちょっとした角度の違いで、出来てくる形が全く違ってくることを、子どもたちは直感的に感じつつ遊んでいるようです。

 今週行う直角二等辺三角形のケルンモザイクの遊びも、その後の作品作りも、「このようにやらなくてはいけない」というルールはひとつもありません。ただ、そこには、「直角2等辺三角形」という普遍の法則が存在しているだけです。どのように遊ぶか、何を作るかは、その子次第です。決まった答えはありません。言い換えれば、子どもたちが遊んでいる内容や、子どもたちが完成させた作品は、その子どもが見つけた「答え」でもあります。子どもたちが試行錯誤し、見つけ出した答えは、いつもどれもすばらしいものばかりです。「もう少し、こうした方がいいんじゃない?」なんて、アドバイスしないであげてくださいね。子どもは決してアドバイスは求めていません。私のアドバイスも求めていないので、私も決してアドバイスはしません。ただ、丸ごと認めてくれること。答えを見つけたことを一緒に喜んでくれることだけを、子どもたちは願っています。そして、丸ごと認められた子どもは、素直なまま、優しさを持ったまま、心にたくさんの愛情を蓄えて、他の人たちを幸せにしていける大人へと成長するのだと思います。

 アトリエで一緒に活動される親子クラスの保護者の方々の中には、「きちんと最後まで作る」ことを大切とされる方も多いと思います。また、そうではないことを頭では理解されていても、つい「最後まできちんと作るのよ」と言ってしまう保護者の方もいらっしゃることと思います。親子クラスの子どもたちは「目の前の楽しいことをやる」年齢だと思います。ゴールを設定して、そのゴールに向かって努力していくことは、まず出来ないと言えるでしょうし、ゴールを設定した時点で、やることが嫌になる子も多いと思います。子どもから一歩下がって、「アトリエの空間は何をしても大丈夫」という気持ちでいてください。どうしても危険な時だけ講師の方から子どもに声をかけますので、それ以外では子どもたちの自然な姿を見守ってあげていてください。子どもたちが成長するためには、「失敗」も必要な経験ですので、「成功した作品」を作ることが目的でないことも理解いただきたいと思います。また、大人の目から見たら「失敗した」と見える作品でも、子どもの目から見たら「大成功・大満足」の場合が多いのです。今年も子どもたちがどのような成長を見せるのか、本当に楽しみですね。保護者の方々と一緒に、見守っていきたいと思っています。

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Auther

能見 圭子

わくわく創造アトリエ

横浜港北プレイルーム

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